第4話 ミルッヒ
閉鎖された空間の中、私は彼と二人きりの時間を過ごす。
二人きり、というのは語弊があるかもしれない。私はずっと、彼の躰内にいるのだから。
顔を見ることができなくても、確実に感じることができる、彼の鼓動と温もり。
ここには新鮮な出逢いも新しい発見もないけれど。彼がいる。大好きな、大好きな彼が。
彼が居れば、何もいらない。
変化より何より、この日常こそが私の一番の幸せだから。
黒雲が立ち込めるたびに、私の心も空にシンクロする。
雨の日はきらい。
寒い日はきらい。
彼と二人きりで居られなくなってしまうから。
邪魔者が彼の中に入り込むから。
「アイツ」が来ると、私の小さな胸は不安と嫉妬で一杯になる。
どうして、彼はあんな奴の言うことを聞くの?
どうして、「アイツ」がいる間、私の言うことはきいてくれないの?
哀しくて、辛くて、もうどうにかなりそうだよ。
お願い。私だけを見て。
あんな奴見たりしないで。
私だけのそばにいて。
本当はこんな醜い感情抱きたくないの。
自分が嫌な奴だなんて思い知りたくないの。
彼の心が手に入るなら、他には何もいらないのにね。